
お久しぶりです、小林です。「お久しぶり」が定型のあいさつになってしまってますねー、いけませんな。そういえば、返信メールの書き出しにも「遅くなってごめんなさい」「すみません」みたいな文句が多い気がします。このままいくと、電話口で「もしもし」の代わりに「すみません」って言いそう。こんな書き出しですみません。あぅっ…鶏か俺は……_| ̄|○
さて鳥頭っぷりを発揮したところで、先週観た『コリオレイナス』のレビューを。
*まっさらな気持ちで作品を観たいという人は、けっこう内容に踏み込みますのでご注意を。
坊主頭の唐沢さんが吠えまくる『コリオレイナス』は、「蜷川さん、海外に持っていくつもり満々だな」というのが全体的な印象。もちろん実際に4月にロンドンのバービカンでのフェスティバルに参加するんだけど。仏教モチーフの美術がこれでもかってくらい散りばめられています。もちろん、闇雲に和風の意匠を用いてるわけではなくて、主人公マーシアス(コリオレイナス)の、気性や母親ヴォラムニアとの関係を分かりやすく視覚化する装置になっているのがミソ。鬼を踏みつけたポーズの四天王像は、戦となれば臆病で政治となれば風見鶏なローマ市民に迎合することを潔しとしないコリオレイナスの象徴で、実際に戦の場面で彼は敵に怖じ気ずく手負いの味方兵を蹴飛ばし、踏みつける場面も出てきます。で、母親の方は前面の階段舞台を昇った奥で複数のふすま絵の一枚、色彩豊かな仏の絵に象徴されます。慈悲深い母のようでもあり、力強い後光(?)で正しい道を指し示す賢者のようでもあり。もっと○○菩薩みたいな仏様の具体名が分かると理解が深まるのだろうか? みうらじゅんさんにご教授願いたいところです。
これ以外にも仏教、和ものイコンは満載。衣裳は和洋折衷で白と黒をくっきりわけたモノトーン。武器も長刀、太刀が使われ、殺陣にアクセントを付ける役割を見事に果たしてます。とにかくどのシーンもかっこいい画になる。ローマ市民たちの群衆シーンも相当立ち位置に気を使ってる。これが蜷川演出のすごいところですね。どこを切り取っても美味なボンレスハムを3時間かけて食べ切った感じ?
ただ正直、ストーリーとしては、ローマをおっ放り出されるまで頑に市民に迎合することを拒むコリオレイナスのあまりの融通の利かなさや、ローマへの復讐を誓い敵軍の将軍に助力を求めてすぐさま受け入れられる様など、理解に苦しむところはあります。自分が小市民だからかもしれませんが。
で、そんなちっぽけな疑問を吹き飛ばしてしまうのがやはり役者さんの力。コリオレイナスを演じた唐沢さんの利かん坊っぷりもハマってましたが、そんな鬼っ子を産みそうな母親ヴォラムニア像を白石加代子さんが圧倒的な演技で作り上げてました。理屈よりも「ああ、この母ちゃんから生まれたのなら分かる」という説得力。何なんでしょう。イギリスの観客が観ても伝わるような気がします。
それにしても難しい問題を扱った作品です。「衆愚と英雄」という風にくくれば、コリオレイナスの生き方は非常に潔いしかっこ良い。まあ、「悲劇」は英雄の特権ですから、かっこ良くなるもんなんですが。だけど、「平等主義とエリート主義」というふうにくくると、コリオレイナスは「俺様のような誇り高き男を追い出した無知蒙昧な凡人どもは死ね」という、かなりヤバい人になってしまいます。戦争という災厄をローマにもたらす大悪人です。劇中、このかっこ良くもあり、ヤバくもあり、という二つの面が常にちらつくんですね。蜷川さんは、その対極にいる市民を意識させる演出もきちんと用意しています。舞台空間を覆う特殊な鏡(透けて向こうが見えたり、鏡面になったり)を使って、観客が自身の姿を見る時間、市民の一人としての自分を見る時間が数回生じます。「アーユー凡人?」と問われているようで、実に落ち着かない。英雄への憧れもありつつ、利かん坊にはなりたくないし…。こういう時、やっぱり戯曲の背景をきちんと知らないといけないなぁと思います。シェイクスピアはどういうつもりで、誰に向けてこれを書いたんでしょうね。戯曲読むかぁ。
さて、最後に少しだけもう1作品。世田谷パブリックシアターで上演されている『遊*ASOBU』なんですが、BATIKのダンサー・黒田育世さんが抜群の存在感を発揮していました。奇妙な動きをしている時も、髪を振り乱して踊っている時も全身で「遊んでる」。表情がすごく生き生きして、つられて楽しい気分になりました。BATIKの新作『ペンダントイヴ』(これも世田谷パブリックシアター)は絶対観にいきます!
『コリオレイナス』(2月8日まで/@彩の国さいたま芸術劇場)
『遊*ASOBU』(2月3日まで/@世田谷パブリックシアター)
BATIK http://batik.jp/
http://theaterguide.iza.ne.jp/blog/trackback/109744
2007/01/31 12:38
2007/01/31 18:05
ありありさん、コメントありがとうございます。小林です。
えー、ありありさんの趣味嗜好が分かりませんので、あくまで僕の理由づけになりますが、迷っておられるなら「行くべき」だと思います。『コリオレイナス』ってシェイクスピア作品の中でもさほど上演される機会がないようです。それは『ハムレット』『マクベス』なんかに比べると戯曲としての完成度や、魅力が足りないということなのかも知れませんが、逆に考えれば上演自体がかなり貴重ということなんだと思います。
それに、この蜷川版にかんしては、そんな戯曲をダレることなく観客に見せようという演出家の意地が、多彩な趣向となって表れていて、本文にも書いたとおり、僕は3時間たっぷり楽しめました。
確かに埼玉の与野まで出向いて3時間(休憩いれてもう少しかかります)の芝居を観るというのは、考えてしまいますよね。僕は自転車で乗りつけられるジモティーなので、その悩みは少ないんですが(笑)。
せりふがとにかく大変なシェイクスピア劇ですが、役者さんもがんばってます。坊主頭の唐沢さんもセクシーです。あと、おじさま役者が大勢でてくるので、好きなひとにはたまらないかもしれません(笑)。
こんなんで参考になるでしょうか?
お時間が許すようでしたら、ぜひぜひ観にいってください。
2007/02/01 18:59
今井様 小林様
いつも楽しみに記事を待っています。
今年の目標は紙プロデビューです。
KAKUTAはご覧になりましたか?
ありあり様
英国の俳優にとって、ハムレットに次ぐというか並ぶぐらいコリオレイナスやイヤーゴは避けて通れない役柄です。
日本には珍しい自立した俳優になりつつある、すばらしい唐沢さんお演技を見るだけでも必見だと思います。
2007/02/01 23:52
To serendipityさん
どうも、さっそくいらっしゃいませ、今井でございます。コメントありがとうございます。もっとガシガシ更新できればいいんですけどね。がんばれ、小林! 久しぶりに書いてくれたので(笑)、少し皆さんに見ていただこうと今井は少し自嘲しております。でも、土、日曜には2月の観劇希望を書こうかな。serendipity さん、「紙プロ」とは紙のプロレスですか? 私もぜひ進出したいです。まじに。最近、週刊プロレスのコラムの中で演劇雑誌の編集長とか出てくるのはたぶんボクです。編集長ではありませんが。
>ありあり様
コリオレイナスはもう4月にロンドンのバービカンで上演されるようですよ。今井は20年演劇見てますけど、蜷川幸雄氏が和の彩りで作り上げたシェイクスピアは初めて見るんですよ。それが楽しみです、伝説再びといいますか。前にスティーブン・バーコフというこわ〜い俳優さんが日本でやった記憶があります。取材の時に不機嫌具合を身体から発散させていて、約束の取材もできませんでいた。コリオの名を聞くのはそれ以来ですね。
ところで、シアターコクーンの『ひBり』、すごくいいですよ(ここに書くなって?)。松たか子さんにとっての、代表作になるんじゃないかという予感がします。
2007/02/02 14:57
小林さん
serendipity さん
今井さん
ありがとうございます。
みなさんから、いろいろなご意見を頂戴し、
やっぱり観ることにしました、、、。
明日の夜しか時間がなかったのですが、
無理無理、なんとかしてもらっちゃいました(^^;
また観た感想でも書かせていただきます。
取り急ぎ、御礼とご報告まででしたー☆
2007/02/07 10:45
いゃいゃ、行ってまいりました、、、。
不勉強でお恥ずかしいのですが実は今回上演に至るまで「コリオレイナス」という作品の存在を知りませんでして。
とってもダイレクトで紳士的なステージングで、
いくつか観ている蜷川作品の中でも、私の中ではかなりハイレベルな仕上がりに感じられました。
小林さんがおっしゃっておられた通り、理解に苦しむストーリー展開の
一面もありますが、2幕の唐沢さん、勝村さん、流石の貫禄の白石さん他、本当に役者さんが素晴らしくって。
アジアテイストのセットや、効果音とか、衣装とか、イギリス受けしそうですよね。向こうの評価も楽しみなところです。
これを機に、シェイクスピアの原作をまとめて読んでみようかな、と思っております・・・。
ホント、勧めてくださった皆様、本当にありがとうございました。
危うく見逃すところでございましたので・・・。。
これからも情報、お待ちしております☆


by 田窪桜子
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